イモネジとは、形状的には、頭部が無く、外側全部が ねじ状になっているネジです。 そうですね、あたかも イモムシ の様な形です。
イモムシネジ の ムシ が省略されて イモネジ となり、イモ が省略されて ムシネジ と呼ばれる様になりました。 (ちなみにこの論は、弊社技術顧問の推論ですのでアシカラズ…)
弊社の調査ではイモネジと呼ぶ人の方が多数派(65%)で、ムシネジと呼ぶ人は少数派(3%)ですね。 またイモネジと言う呼び方は、形状からの愛称・俗称であり、差別的な蔑称(べっしょう)ではありません。
イモネジとは、ねじを締め込んで行くと雌ねじ(穴)の中にネジが全部入ってしまう様な、頭部の無いねじの事で
JIS規格での正式な名称は「止めねじ」です。
英語で止めねじは Set screw(セット・スクリュー)と言いますが、愛称(俗称)では Grub screw(グラブ・スクリュー)と言います。 Grubとは「地虫、カブトムシの幼虫」の事ですので、愛称(俗称)の発想が日本と同じなのは面白いですね。
英語圏では Set screw(Setscrew 含む)と呼ぶ人が47%、Grub screw と呼ぶ人が53%で、ほぼ同人数でした。(2021年1月18日に調査)
--- さて ---(前の所に戻る)
止めねじの使い方は、ねじの先端で相手を押して止める、その様な使い方をします。
上記3種類の止めねじの内でイモネジと呼ばれるのは、「すりわり付き止めねじ」と「六角穴付き止めねじ」の2種類です。
弊社がお勧めする、すりわり付きイモネジと、六角穴付きイモネジの選択基準は、
小さいネジのことを、ビスとも言いますので、イモビスと呼ぶ人が少数ですが居られます。イモビスって呼ぶ人は、ねじのプロっぽい感じがしませんか。
さてイモネジが消える日?って少しショッキングな表現ですが、我々は本当に心配なのです。 それは小径(M3以下)で短い全長のすりわり付き止めねじを製造するカム式自動旋盤の業界が、縮小しているからなのです。
その理由はイモネジを作る 機械が消える?であり、 イモネジを作る 工場が消える?なのです。 それらを、少し長くなりますがお話ししましょう。
弊社が創業した頃(1965年)よりも遥か昔は、色々なネジを切削加工で製造するのに手作業(ロクロ?)で製造していたらしいですが、 弊社が創業した頃には、カム式自動旋盤により自動で作られていました。
その頃、オネジのねじ部の加工はダイスと呼ばれる工具を使っていましたし、マイナスドライバーが入るすりわり溝も、
自動旋盤でツマミと言う治具とツマミ装置でフライスカッターを使い自動的に加工していました。
しかし、その様なスリワリ加工のできる自動旋盤を作る工作機械メーカーは、2004年現在で世界中を見渡しても有りません。
まさに「イモネジを作る 機械が消える」なのです。
自動旋盤にはその制御方法により、カム式自動旋盤とNC自動旋盤とがありますが、ここで言う「イモネジの製造機械」はカム式自動旋盤です。 弊社の場合、1個作るのに掛かる時間は早いものは1.7秒位です。右の動画のスタートから1分50秒辺りにその動きが映ります。
NC自動旋盤でも「すりわり付き」の「イモネジ」を作ることは可能ですが、1個作るのに掛かる時間がカム式自動旋盤の 2倍~3倍は掛かるでしょうから、コスト競争力に於いてはカム式自動旋盤の敵ではありません。
色々なタイプのカム式自動旋盤でオネジ(ダイス)加工や、メネジ(タップ)加工は可能ですが、 全ての機種でマイナスドライバー用の「すりわり加工」が出来るわけでは有りません。 弊社にあるのは野村精機のカム式自動旋盤ですので、野村精機の型番でお話します。
P-8 は、野村精機が創業して初めて作った自動旋盤です。
P-8 は弊社の創業者である斉田孝が24歳の頃に、野村精機の初代社長:野村孝之氏と共に設計した自動旋盤です。
弊社にある P-8 の銘板(右写真:クリックで大きく表示)に「製造 昭和35年 5月」の刻印が見えますし、「NO.192」の数字も読めます。
弊社創業者の斉田孝は昭和9年2月生まれですので、昭和35年は26歳でした。
創業者(斉田孝)から聞いた話では、自動旋盤メーカーとしては無名の「野村精機」では機械が売れないと言う事で、 最初に作った P-8 は富士精機の名前(FUJI SEIKI)を使わせて貰ったそうです。 弊社には FUJI SEIKI 銘(右下の写真)の、野村精機の P-8 が 9台あります。
昔(1970年代半ば頃まで)は、各工作機械メーカーは「すりわり付きねじ」を作るカム式自動旋盤を細々と作っていました。 ところが世の中の流れで、「すりわり付きねじ」は使われない方向へと進んで行きました。
「すりわり付きねじ」を使う組立ては、手間・コストが掛かります。 それで機器メーカーでは、「すりわり付きねじ」を使わずに「十字穴付きねじ」を使います。
そのような訳で「すりわり付きねじ」そのものが、随分と減って来ています。 ただし、今でも機械式腕時計の中には、頭部が鏡のようにキレイに磨かれた、美しいマイナスの「すりわり付きねじ」が使われていますね。
各工作機械メーカーは「すりわり付きねじ」を作るのに適したカム式自動旋盤を、1975年頃以降は生産していません。 「すりわり付きねじ」を作るカム式自動旋盤は、昔作られた古い機械だけです。ネジを作る工場では古いカム式自動旋盤を修理しながら使っています。
『作ったネジの単価は安いし、古いカム式自動旋盤の維持は大変で、とてもじゃないがやってられない』 それが、弊社以外で「すりわり付きねじ」を作っている工場の本音でしょう。
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↑ これは昔使っていた、 M1.4×P0.3用の 切削ダイスです。 |
しかも、大変なのは自動旋盤に関してだけでは無いんです。 カム式自動旋盤でネジを加工するのに、普通はダイスと言う切削工具を使いますが、これが又大変な代物なのです。 たまに、ねじ山の加工がされていないネジが出来るなど、きちんとしたねじ山が出来る様に調整するのが大変面倒なんです。
また、カム式自動旋盤でネジを加工すると、ダイスをホールドするダイス・ホルダーが高速回転(8,000rpm)して、 切削油のオイルミストが飛散して工場内に霞(かすみ)がかかり、環境を悪くします。
さらに、ダイスの材質であるダイス鋼は、比較的に磨耗が早く、取替え時期がひんぱんになります。 しかもダイス・メーカーではダイスそのものを作るのに手間が掛かるために作るのを嫌がり、結果的にダイスの価格が高くなります。 切削ダイスの代わりに転造ダイス(ローリング・ダイス)を使ったこともあるのですが、弊社では期待した結果は発揮できなかったです。
※ダイスについて詳しくはこちらをご覧下さい。
イモネジを切削で作る機械は、カム式自動旋盤です。NC自動旋盤ではコストパフォーマンスが悪すぎます。 カム式自動旋盤には、主軸移動型(ピーターマンタイプ/スイス型)と主軸固定型とが有りますが、 1975年頃から各自動旋盤メーカーでは、すり割り加工の出来る新しいカム式自動旋盤を製造していません。
そもそも各自動旋盤メーカーではNC自動旋盤の製造にシフトし、カム式自動旋盤は作らなくなりました。 確かではありませんが、自動旋盤メーカーではカム式自動旋盤の製造は2000年頃には受注(〇〇台以上)後の注文生産だった、と言う記憶が有ります。
カム式自動旋盤を使っている工場では、1970年頃に作られた自動旋盤を使い続けているのです。 24時間休みなく働き続ける自動旋盤は、回転部分や摺動部分が摩耗してガタが出てきます。 そのガタを修理する為には、普通旋盤・平面研削盤・円筒研削盤・ボール盤・縦型ミーリング、横型ミーリング 等の工作機械が必要ですし、その機械を使いこなす人と技術も必要です。 弊社ではそれら各種工作機械(写真付き)を設備しておりますので、よろしければご覧下さい。
しかし、カム式自動旋盤を使っている一般の工場では、それらの工作機械を持っていないのが現状です。 ガタの出てきた自動旋盤を騙しダマシ使うのには、職人の高度な腕が必要となりますが、 その様な高度な腕を持った職人は高齢となり、後に続く若い職人は中々現れません。
イモネジを作っている自動旋盤工場は、従業員が10人未満の小企業が多いのです。 社長さんも高齢になり、従業員の人たちも、それなりの高齢者です。つまり・・・
また、カム式自動旋盤工場では、経営者の後継者の問題があります。 社長の息子さんも、カム式自動旋盤工場では継ぐ気になりません。 従業員の若返りを図りたくても、今時の若い人に、この業界に入って腕を磨こうとする人は少ないのです。
そうです、イモネジを作るカム式自動旋盤の工場存続が危ぶまれているのです。
実は、これは今に始まったことではありません。1980年代には皆さん気が付いていた事です。 ですから経営者の方々は、カン・コツを必要とするカム式自動旋盤からNC自動旋盤へと、設備を切り替えて行ったのです。
2006年の9月に、スイスに住んでいる日本人の女性から連絡を頂きました。 この方のご主人は、スイスで自動旋盤の工場を経営しているスイス人です。 日本への帰省を兼ねて、ご主人は日本におけるカム式自動旋盤の状況を知りたいとの事で、 インターネットで日本の数社に見学の打診をした結果、弊社に連絡をして来られました。
その年の12月にお二人で弊社に来られた時、スイスでの状況をご主人に聞いた所(奥さんが通訳) スイスでもカム式自動旋盤は少なくなっていて、ご主人は危機感を覚えている、との事でした。 スイスは、ピーターマン社が世界で初めて主軸移動型の自動旋盤を作った発祥の地ですが、カム式からNCへの流れは世界的な潮流なのですね。 古いピーターマン型自動旋盤の写真と仕様が、シチズンの「自動盤歴史館」に載っています。
カム式からNCへ、の結果、日本国内にはカム式自動旋盤が少なくなり、その中でも すりわり付きねじを製造できるカム式自動旋盤は、さらに少なくなっています。 このままでは小さいイモネジが消えてしまう。
今後とも発展して行く「イモネジの製造工場」は無いのでしょうか?
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これがネジ切り加工 する基本的なバイト の形状です |
ここまでいろいろお話してきましたが、結局、イモネジが消えてしまう原因を一言で言うと「ねじをダイス加工しているから」なのです。
ですから、カム式自動旋盤で、ねじ部をダイス加工なしで作る事が出来れば解決するのです。
NC自動旋盤と同じ様に、ネジ切りをバイトによる、チェーシング加工にするのです。 バイトの材質は超硬合金で、ダイスの材質であるダイス鋼よりも、はるかに硬くて磨耗しません。 そしてその耐磨耗性以外でも、チェーシング加工ならダイスの欠点が全て解決できるのです。
しかしそれは「言うは易し、行いは難し」です。 その様な中、斉田製作所にはカム式自動旋盤でチェーシング加工(バイトでのネジ切り)が出来る秘密が有るのです。
その秘密は斉田製作所の創業者:斉田孝に由来します。 詳しくは「小さいイモネジを作る機械」に書きましたので、よろしければご覧下さい。 チェーシング加工の詳しい事は「チェーシングによる、ネジ加工」をご参照ください。
それにしても儲かるのでしょうか? はい、儲かります。 いえ、儲かるようにします。
儲けないと次の世代に企業を存続させて行けませんし、小さいイモネジの供給責任を全う出来ませんから。 小さいイモネジを必要とされるお客様がいる限り、弊社は作り続けます。 その為にも弊社は儲けて、社員に還元して、会社を存続させなければなりません。
現場の要求による機械改造とコンピューター制御、そしてより良い加工方法の飽くなき追求が、斉田製作所の力の源泉となっております。 これで安い単価でも、儲かるのです。儲かるようにしているのです。
たゆまぬ研究・開発によって生まれたのが、小さいイモネジ「デルスクリュー・DELscrew」です。 斉田製作所では、今後もこの小さいイモネジにこだわり、製造を続けていきます。
ですから、皆様ご安心下さい。小さいイモネジはデルスクリューとして蘇(よみがえ)ったのです!
DEL規格とは、すりわり付き止めねじのJIS規格(B1117)より短い全長(1.0mm~1.8mm)を斉田製作所が独自に設けた規格です。
以下にDEL規格を設けた経緯と、デルスクリューの紹介を致します。
1988年(昭和63年)に、すりわり付き止めねじのJIS規格(B1117)に大きな変更がありました。
この変更の目的は、JIS規格とISO規格との統合を目指しての事だと思いますが、その結果、 旧規格と新規格のすりわり付き止めねじが市場に混在して流通するようになり、使う人達も、作る人達も、大分長いあいだ混乱しました。
斉田製作所では1965年の創業以来、様々なすりわり付き止めねじを受注して製造をしてきましたが、 その辺りの状況を肌で感じてまいりました。
例えば、JIS規格の平先・すりわり付き止めねじの規格では 一番短い全長は 2mmですが、もっと短い全長の止めねじが欲しい時があります。
M1、M1.2、M1.4や M1.6等の細いすりわり付き止めねじでさえ、JIS規格での一番短い全長は2mmです。 しかしユーザーとしては、2mmよりも短い全長の止めねじを使いたい事は、多々あります。 そんな時にはユーザー自身が欲しい図面を書いて特別に注文しますが、 今の日本でこの様な注文に応じてくれる工場は、とても少なくなっています。
また運よく注文に応じてくれる工場が見つかっても、ユーザーの望む品質・納期・価格に応えてくれるとは限りません。 イモネジの外見は簡単な形状ですが、特に太さの割に短いイモネジを作るのは中々難しいのです。
一般的なカム式自動旋盤でイモネジを製造するには切削ダイスを使うのですが、 この切削ダイスでイモネジを作るのには職人の高い技術が必要です。 しかしカム式自動旋盤の高い技術を持った職人は高齢になり、若い職人はカム式自動旋盤を敬遠し、NC自動旋盤に携わっています。
弊社ではカム式自動旋盤での ねじ切り加工に於いては、切削ダイス加工に見切りをつけ、バイトによるチェーシング加工の開発を
1987年から開始し、今では全ての
P-8型カム式自動旋盤をマイコン制御のカム式自動旋盤に改造し、
ねじ切り加工をバイトによるチェーシング加工で行っています。
マイコン制御のカム式自動旋盤については「イモネジを作っている動画」も、分かり易いと思います。
イモネジの製造関連の事情は、 「消える製造機械」や 「消える工場」や 「イモネジが蘇(よみがえ)る日」 に詳しく書きましたので、よろしければご参照ください。
すりわり付き止めねじのJIS規格 B1117-1995では、 ねじ先の形状は「平先」「とがり先」「棒先」「くぼみ先」及び「丸先」の5種類となっていますが、 弊社が受注したすりわり付き止めねじの先端形状別では「平先」「とがり先」「丸先」の3種類で 96%を占めています。
2004(平成16)年以前は、古い規格に基づいた すりわり付き止めねじ と、新しい規格に基づいた すりわり付き止めねじ と、 各ユーザーが独自に設計した すりわり付き止めねじ が、世の中に混在している状況でした。
そこで弊社は細径の すりわり付き止めねじ を独自に規格化しようと決心し、DEL(デル)規格のDELscrew(デルスクリュー)を 2004年7月に日本語のWEBサイトで発表しました。また 2011年3月には英語のWEBサイトでも発表し、 2012年1月には中国語のWEBサイトでも発表しました。
下記表の「色の付いた枠」をクリックすると、それぞれの規格表や図・写真を表示します。
ネジ先形状 | すりわり付き止めねじ | ||
---|---|---|---|
DEL規格 快削鋼 | DEL規格 ステンレス鋼 | JIS規格 B1117-1995 | |
平先 | M1×1.0~ | M1×1.0~ | M1×2.0~ |
とがり先 | M1×1.0~ | M1×1.0~ | M1×2.0~ |
丸先 | M1×1.0~ | DEL規格 ナシ | M1×2.0~ |
くぼみ先 | 受注生産 | M1.6×2.0 ~ | |
棒先 | 受注生産 | M1.6×2.5 ~ |
DEL(デル)規格はM1~M2.5の細径 8種類(M1、M1.2、M1.4、M1.6、M1.7、M2、M2.3、M2.5)を JIS規格には無い全長 1.0mm ~ 1.8mm までを0.1mm 刻みに取り揃えて DELscrew(デルスクリュー)とした すりわり付き止めねじ の規格です。 その形状や公差は、1980年制定のJIS規格と1988年制定のJIS規格とを融合しました。
英語の” dell ”には、「小さい谷」・「小渓谷」と言う意味があります。
短い全長のイモネジを欲しい人は世界中にいるはずと、このDEL(デル)規格を世界に向けて発信しています。 外国語対応のWEBサイトとしては現在、 英語のDELscrewと、 中国語のDELscrewを運営しています。 今、世界各国の会社や個人と取引をさせて頂いております。
また、ステンレス(SUS303相当)の細径8種類(M1、M1.2、M1.4、M1.6、M1.7、M2、M2.5、M3)も、 全長1.0mm~1.8mmまでの一部ですが、ステンレス・DELscrew(デルスクリュー)として、 弊社独自のデル規格としました。
短いすりわり付き止めねじの品質は「無料サンプル」で、ご確認頂けます。 ただし、六角穴付き止めねじの無料サンプルは、ご用意できませんので、ご了承ください。
頭の無い止めねじ(イモネジ)のJIS規格には「すりわり付き止めねじ(B1117)」と「六角穴付き止めねじ(B1177)」があります。 両者の違いを一覧表にしましたので、よろしければご覧ください。 ちなみに、頭のある止めねじのJIS規格には「四角止めねじ(B1118)」が有ります。
すりわり付き止めねじで、弊社がM1からM3までの細い呼び径を揃えている理由ですが、 それは、世間ではM3よりも大きいM4、M5、M6、等々の呼び径は、 一般的にはホーローセットと呼ばれている六角穴付き止めねじが供給されていて、 切削加工の弊社が得意の、小さくて短いイモネジの強みが発揮できないからです。
六角穴付き止めねじは、M1.6はありますが、M1.4、M1.2、M1はありません。 細径(小径)のM1、M1.2、M1.4 は細すぎて六角穴の制作が難しいのですネ。
先端形状としての需要は、平先(45%)・とがり先(35%)・丸先(16%)の三種類で
95%以上がカバーできる事から、鉄製のDEL(デル)規格の先端形状はこの三種類としました。
鉄製のDEL(デル)規格の「呼び径(太さ)」は、
M1、M1.2、M1.4、M1.6、M1.7、M2、M2.3、M2.5 の8種類です。
M1.7 と M2.3 は古いJIS規格で、現在のJISねじ規格表には載っていませんが、
市場ではまだまだ使われていますので鉄製のDEL(デル)規格に加えました。
鉄の材質は鉛入り快削鋼(SUM24L)相当の秋山精鋼の2600Sを使っており、
標準在庫は亜鉛めっき(白と黒)ですが、客先のご要望により、その他のメッキや、表面焼入れ(浸炭焼入れ等)を施します。
材質が鉄(快削鋼:SUM24L)ですので、強度は余りありません。JISの強度区分は、14Hです。
JIS規格に載っている全長(2.0mm以上)については、全長公差をDEL規格では +0/-0.2mm 又は +0/-0.3mm としています。
(現在のJIS規格の全長公差は ±0.2mm 又は ±0.3mm です)
JIS規格より短い全長(2.0mm未満)は、全長公差を ±0.05mm としています。
受注製作では、全長が1mm未満の イモネジも、加工できます。
(外径ねじ部分の山数が、2山有れば製作可能です)
ステンレス製のDEL(デル)規格のねじ呼び径は、
M1、M1.2、M1.4、M1.6、M1.7、M2、M2.5、M3、の8種類です。
M1.7 は古いJIS規格で、現在のJISねじ規格表には載っていませんが、市場ではまだまだ使われていますので、ステンレス製のDEL(デル)規格に加えました。
ステンレス製のDEL(デル)規格の材質は秋山精鋼のASK-3000FL(鉛入り)を使っており、
これは鉛を除けばSUS303(鉛ナシ)相当です。
また、ご要望により表面処理も施します。
受注品として秋山精鋼のASK-3000S(鉛ナシ)でも製作しており、 これはSUS303(鉛ナシ)相当の材質です。
JIS規格に載っている全長(2.0mm以上)については、全長公差をDEL規格では +0/-0.2mm 又は +0/-0.3mm としています。 (現在のJIS規格の全長公差は ±0.2mm 又は ±0.3mm です)
JIS規格より短い全長(2.0mm未満)は、全長公差を ±0.05mm としています。
市販されているイモネジの多くは頭に六角の穴があいていて、そこに六角レンチを差し込んで回します。 これらは六角穴付き止めねじ、とかホーローセット・スクリュー(略して、ホーローセット、ホロセット等)と言います。
現在、六角穴付き止めねじを作るには、プレス加工(Wikipedia)と ローリング(転造)加工で作ります。これらは塑性(そせい)加工と言われる加工方法です。
外径が細い・小径のホーローセット(M1.6未満)になると、六角の穴も必然的に細くなります。 すると六角の穴と六角レンチの引っ掛かりが小さくなり、強く締め付けると六角穴や六角レンチがバカになります。 (小径のM2未満のホロセットになると、加工上から単価も高くなるようです)
そこで外径が細い、つまり小径のイモネジ(M1.6未満)は、すりわり溝にしてマイナスドライバーでねじを回します。
JIS規格ではこの様なイモネジを、すりわり付き止めねじと言います。
すりわり溝とマイナスドライバーとは、しっかりと噛み合いますし、すりわり付き止めねじの先端部で相手部材を押し付ける時には、
すりわり付き止めねじ全体がメネジの中に入っていますので、強く締めて、すりわり溝が広がろうとする時には、
メネジの内径部がすりわり付き止めねじの広がろうとする力を受けてくれて、
すりわり溝やマイナスドライバーはバカになりにくい(なめにくい)のです。
ただし、マイナスドライバーの先も、すりわり溝も、ダレていない、しっかりとした形状なのが前提です。
すりわり溝のことは、「マイナス溝」とか単に「マイナス」とか言われます。
それに使うドライバーが、「マイナス・ドライバー」です。
それに対して、「十字穴」のことを「プラス」と言い、それに使うドライバーが、「プラス・ドライバー」です。
プラスのネジは使い勝手が良いのですが、強く締める時には、ドライバーが上に浮き上がる力が生じて、十字穴が舐め易くなります。
プラスのネジで市中に多く出回っているのは、ほとんどが頭付きのねじです。
プラスのイモネジも市中に多少はありますが、JIS規格には存在しません。
すりわり付き止めねじを作るのに一番適している加工は、カム式自動旋盤による切削加工です。 その加工方法の概略を下記に述べますと、
この様にカム式自動旋盤でのイモネジの加工では、先端の形状(平先、とがり先、丸先)加工と、 ねじ部の加工とがワンチャック加工されますので、 イモネジの先端部と、ねじ部との直角度や同軸度の精度が高いのです。 プレス加工とローリング(転造)加工では、ワンチャック加工とは言いません。
ただし、一般的なカム式自動旋盤では、ねじ部の加工は切削ダイスで加工しますので、 切削ダイスの食い付き方によっては、イモネジの先端部とねじ部との同軸度の精度が落ちる事があります。 弊社でも1986年まではねじ部の加工は全てがダイスで加工でしたので、ねじの品質維持に大変な苦労をしました。 もう二度と、あの頃には戻りたくありません。
現在、弊社の保有する マイコン制御のカム式自動旋盤では、 イモネジのねじ部の加工は NC自動旋盤と同様にバイトでのチェーシング加工ですでの、 ネジの先端部とねじ部との直角度や同軸度はバラツキが無く、精度が高くなりますし、 ねじの品質維持も切削ダイス加工より遥かに楽です。
バイトでのチェーシング加工ですと、ねじ有効径が規格よりも太いネジや、JIS規格には無いピッチのネジや、 ねじ山の数が1山とか2山のネジなどが、簡単に製作可能です。
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これがネジ切り加工 する基本的なバイト の形状です |
バイトとは金属を削る刃物の事で、刃の部分の材質は硬い超硬合金です。 チェーシング加工するバイトは、ダイスよりも硬い超硬チップの先端を60°の三角形に成形したものです。
ダイス加工の場合は、ダイスを材料に一度食付かせると後は回転だけを与えれば、ダイス自身でネジを切って進んで行きます。
所が、バイトの場合にはダイスと違い、自分自身でネジを切って進んでいく機能は有りませんから、 材料が1回転する間にネジの 1リード分(リードとは、ねじが 1回転する時に進む距離で、1条ねじの場合はピッチと同じ) だけ横(長手)方向に正確に送る必要があります。
これを普通旋盤(右の写真:クリックで拡大)で考えますと、材料がユックリと回転をしている所に、
材料が1回転する間に、バイトをネジの1リード分だけ横方向に送る事でネジ部を加工します。
主軸固定型の自動旋盤(チャックジカ・タイプ)は、普通旋盤と同じ様に材料は回転するだけで、 バイトが横方向に動いて、ネジをチェーシング加工します。
主軸移動型の自動旋盤(ピーターマン・タイプ)は、バイトは径方向だけに動いて固定され、 材料が回転しながら横方向に動いて、ネジをチェーシング加工します。
ねじを切削加工する上での、ダイス加工とチェーシング加工での違いの一つは、刃物の逃げ角の有無です。 M3以下のダイスに逃げ角を付ける事は、技術的・経済的に不可能でしょう。
チェーシング加工するバイトには当然ながら逃げ角を付けます。 逃げ角の大きさは、進み方向では大きくする必要があり、反対側では小さくします。 進み方向の逃げ角の角度は、ねじの谷部の直径とねじのリードによって決まります。 バイトには逃げ角がある事で、ねじを加工する時、バイトの切削する部分の腹が被削材のねじ部分に接触しないので、 『ネジ部ムシレ』を生じ難いのです。
しかし、逃げ角があると言っても逃げ角磨耗が大きくなると、実質的には逃げ角が無くなりますので 『ネジ部ムシレ』は生じ易くなりますので、バイトの摩耗管理は大切です。
ダイスはダイス鋼を焼入れ・焼戻しの熱処理をしたもので、バイトは超硬チップを研磨成形したものです。 摩耗管理を考えた時、単純比較は難しいですが、ダイスよりも超硬チップを用いたバイトの方が50倍以上の耐摩耗性があります。
また品質上は、ねじの部分が一山も加工されていない『ネジ無し品』や、ねじが途中までしか加工されていない『不完全ネジ品』は、 カム式自動旋盤でのダイス加工の場合は、ダイスの食付きやネジ切りの深さ管理が不安定要素ですので、 『ネジ無し品』が出来たり『不完全ネジ品』出来たりして、安定的な品質維持が難しいです。
所が、バイトによるチェーシング加工の場合、ねじの部分が一山も加工されていない『ネジ無し品』は、 バイトの欠損によってのみ発生し、バイトの欠損は自動回復はしませんので、品質バラツキの要因とはなりません。 また、ねじが途中までしか加工されていない『不完全ネジ品』は発生しません。 つまり、バラツキのない安定した品質が確保できます。
このチェーシング加工では、ねじ部の長さが 1山のネジでも加工が可能です。 ただし、ねじ部の長さが 1山のネジは、イモネジではなく頭のある、平小ネジ(平ビス)や、 皿小ネジ(皿ビス)でないと、すりわり加工が出来ません。
イモネジではネジの外径部分が、すりわり加工をする上で最少 2山は必要です。
ダイスによるネジ切り加工で、ねじの加工が途中までしかないのは、材料やダイスの送りを制御する
NC式自動旋盤での発生は無いのですが、カム式自動旋盤には、ありがちなケースなのです。
カム式自動旋盤によるダイス加工では、材料を回す主軸と、 ダイス軸を回す副軸との差速によって、ねじ切り加工が行われます。
ねじの加工が途中までしかされないメカニズムは、カム式自動旋盤ではダイスを材料に一度食付かせると、 材料にもダイスにも送りを掛けずに、その後はダイス自身のネジ切り機能に任せる事に 起因しますが、詳細は下記で説明します。
★★★ 右ねじのM2×P0.4をダイス加工する場合で説明します。★★★
★★★「ねじの加工が、途中までしかない」その原因を説明します。★★★
このようなイモネジでは締め込んでいっても、途中で止まってしまったり、 相手のシャフトを止め付けたつもりが、止まっていない、といった事態が起こり得ます。
右の図のように分かり易いものは、まだ良いのですが、右の図よりも更に 1山ほど左側までネジが切れていますと、 見た目には分かり難いですが、メネジに入れていくと途中で止まって、中まで潜り込みません。
これもダイス加工では、ありがちです。
ダイスの切れ刃が摩耗してくると、快削鋼などの脆い(もろい)材料や、
ステンレス鋼などの切削性の悪い材料では、ねじ山の上が欠ける事が生じやすくなります。
「ねじ山の欠け」は必ずしも連続して発生する事はなく、 ダイス切れ刃摩耗の初期段階では、たまに発生しますので、「ねじ山の欠け」不良の発見が遅れます。
ダイスの切れ刃の摩耗限界になる前に、新しいダイスに交換をしたいのですが、 ダイス品質のバラツキや材料品質のバラツキの為、その管理は難しいものです。
ねじ山の一部が欠けていると、ねじ山強度が低くなったり、メネジを傷つける恐れが有ります。
これは、加工機械と、加工技術の未熟さが原因です。
昔は「バッタ」と言われる機械で、すりわり溝の加工を手作業で行っていましたが、 その時にはイモネジを、真鍮で作った治具でホールドして(咥えて)加工していました。
今は自動旋盤内で自動的にすり割り加工をしますが、「ツマミ」と言うジグの穴にイモネジを入れるだけで、 ホールド(咥え)はしないので、ネジの外径寸法と、ツマミの穴寸法の精度と穴の形状精度が、大変に重要となります。
ネジの外径寸法とツマミの穴の、最適なクリアランスは0.01mm~0.02mm位ですが、 これが大きいとすりわり溝の位置が中心からバラツキます。 クリアランスが0.01mm~0.02mm位と言う事は、外径寸法のバラツキや変化を、0.01mm以下に抑える必要があります。
また、フライスカッターがイモネジの端面に当たり始める時、イモネジを押さえてないとイモネジが振動して すり割り加工をキレイに加工できませんので、端面をしっかりと押さえる「押さえ装置」が必要です。
弊社の「押さえ装置」は弊社独自のオリジナルな構造で、すりわり溝の深さを0.03mm以内に精度よく決める働きもするものです。
すりわり溝が偏芯していると、強く締め付けると力が薄い方に偏り、すりわり部が欠け易いのです。 また、必要な締め付けトルクが出ません。
2005年に制定された規格 B1117-2005には「ねじ部に対するすりわりの対称度」として「JIS B1021の付表1における図の番号 図1.10」 と書いてあるだけで、JIS規格表のどこを見れば良いのかが分かり難いのです。
1980年に制定された規格 B1117-1980には「止めねじの形状・寸法」表に、「すりわりの片寄り」については E(最大)として明記されていましたので、分かり易かったのです。
そこで古い規格のB1117-1980の「止めねじの形状・寸法」表から「すりわりの片寄り」部だけを抜き出しました。 これを使っても大きな問題はないと考えます。
ねじの呼び | M1 | M1.2 | M1.4 | M1.6 | M1.7 | M2 | M2.3 | M2.5 | M2.6 | M3 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
すりわりの片寄り (E)最大 |
0.05 | 0.05 | 0.05 | 0.05 | 0.05 | 0.1 | 0.1 | 0.15 | 0.15 | 0.15 |
弊社デルスクリューでは明確な値での管理はしていないのですが、現場作業者は15倍のルーペで M1~M1.7は0.03mm以内で見ていますし、M2~M3でも0.05mm以内で見ています。
すり割り加工でイモネジに発生するベロ状のバリは「ねじ切り加工後の、すりわり加工」の工程で発生します。
このベロ状のバリをなくすのは技術的にも難しいのですが、イモネジのベロ状のバリが脱落すると、 ゴミとなり種々の悪影響を及ぼします。
『イモネジのすりわり部に、ベロ状のバリを無くす』対策品の例
でも示した右の図の方法は「ねじの谷径」よりも直径で0.1mm(片側で0.05mm)ほど深い所までV字状の溝を加工し、
すり割り加工の最後をV溝の「上り斜面」で常に終わらせるのです。
そうすると、不思議なことにベロ状のバリは発生しません。 ただし、すり割り加工の深さを0.03mm以内に管理できないとこの方法は使えませんので、 弊社独自の「オリジナル押さえ装置」が本領を発揮するのです。
右の図のV溝は図面ですからハッキリと分かりますが、実際はねじ山の部分にV溝が有りますので、 見た目にはV溝がハッキリとは見えないと思います。
小さいイモネジのメッキは、本当に難しいものです。 しかし、メッキの乗っていない所があれば、そこから錆が発生します。
当社では、小さいイモネジにもしっかりとねじのメッキが出来る、長野県岡谷市にある 技術の確かな めっき工房「有限会社セルバ」さんにお願いしています。
また、亜鉛めっきの六価クロム対策も、代替の三価クロメート処理で万全です。さらに、黒色の三価クロメート処理も可能です。 ご安心ください。
もちろん、このような「品質が悪い」部分が一つも無いものが、一番良いイモネジと言えます。
但し残念ながら『すりわり部に、ベロ状のバリがある』のを、 現在の加工方法(「ねじ切り加工→すりわり加工」の工程)で100%無くすのは不可能なのです。
しかし、当社ではバリの発生を無くす研究を行っているほか、理想のイモネジを求めて、 日々研究・開発にあたっており、その成果の一つが、当社のすりわり付止めネジ「デルスクリュー」なのです。
ここでは「すりわり付き止ねじ」に関して述べる事をご了解ください。 「六角穴付き止ねじ」については、弊社ではコメントする立場に有りませんので。
さてそれでは本題です。良いイモネジとは一体どんなものを言うのでしょうか。 もちろん理想としては、品質が良くて、単価が安くて、納期も短い、そんな三拍子揃ったイモネジが有れば、最高ですね。
しかしその三拍子、全てが一番と言うイモネジが無かった場合、その三拍子の中でも、何を一番に優先して選びますか?
今の日本は、クレームに対して非常に敏感な国になりました。また、人件費がとても高い国になりました。 そんな日本では「品質が良い」は絶対に欠かせない条件です。
最終的に組み込んだ後に手直しをする、選別をする、その様な手間は今の日本では掛けられません。 ましてや、万が一にも不具合品の止めネジを組み込んだ製品が出荷されて市場クレームになったら、その損害は計り知れません。
場合によっては企業の存続さえも、左右しかねません。信用は、お金では買えませんものね。
「品質が良い」と言うのを具体的に説明するのは大変難しいものですが、下記に箇条書きしてみます。
この様に書いてみますと、お客様にとっては当たり前の事ばかりですね。
でも、どれも当たり前すぎて、「う~ん、内容がピンとこない」
そこで品質が悪い具体例を「こんなイモネジに要注意」で挙げて、 逆説的ですが品質が良いイモネジを説明しています。
どんなに品質が良いイモネジでも、『えっ、そんなに高いの!それではとても使えないよ』と言う様に、 単価(価格)が余りにも高すぎては使って頂けません。
ただ、イモネジだけに言える事では無いのですが、単価(価格)は相対的なものですので、 一概に比較するのは難しいですね。
お客様の求めている(許せる)単価と、我々のご提供できる単価とには、いつも多少なりとも開きがあるものと思います。
その様な中で、日本で作る切削のイモネジでは最低ラインの単価(価格)をご提供しようと 立ち上げたのが弊社規格デルスクリュー(DELscrew)です。
月々量産で流れている場合には、素早い納期が必要な事は余り無いかと思います。
しかし試作の立ち上げ時には、すぐにでも欲しくなりますし、 ちょっとした違いの寸法や形状が欲しい場合もあるでしょう。
更に設計段階では、余りに小さいイモネジですと、組み付け時の作業性なども気になり、 実際に実物を手に取ってみたい事もあるでしょう。
その様な時に、規格品(DELscrew)でしたら無料サンプルを請求する事で解決いたします。
私たちは、設計段階のお客様や、試作時のお客様に、無料サンプルをご提供できる事で、 お客様にご満足いただけるよう願っております。
規格品(DELscrew)については、量産時の納期についても即納体制で臨んでおります。
下記「表内の色の付いた部分」をクリックすると、それぞれの規格表や図・写真を表示します。
M1×2.0 とは、呼び径(太さ)=1mm で 全長=2.0mm の止めねじです。
ネジ先形状 ↓ |
すりわり付き止めねじ | 六角穴付き止めねじ | |||
---|---|---|---|---|---|
DEL規格 快削鋼 | DEL規格 ステンレス鋼 | JIS規格 B1117-1995 | DEL規格 Ni Cr Mo鋼 | JIS規格 B1177-2007 | |
平先 | M1×1.0~ | M1×1.0~ | M1×2.0~ | M1.6×2.0~ | M1.6×2.0~ |
とがり先 | M1×1.0~ | M1×1.0~ | M1×2.0~ | M2×2.0~ | M1.6×2.0~ |
丸先 | M1×1.0~ | DEL規格 ナシ | M1×2.0~ | DEL規格 ナシ | JIS規格 ナシ |
くぼみ先 | 受注生産 | M1.6×2.0 ~ | M1.6×2.0~ | M1.6×2.0~ | |
棒先 | 受注生産 | M1.6×2.5 ~ | DEL規格 ナシ | M1.6×2.0~ | |
CCPoint (W Point) |
DEL規格 ナシ | JIS規格 ナシ | M2×2.0~ | JIS規格 ナシ | |
ギザ先 | DEL規格 ナシ | JIS規格 ナシ | M3×3.0~ | JIS規格 ナシ |
JIS規格に M1.6 より細い呼び径は、すりわり付き止めねじの平先・とがり先・丸先、にのみ有り、 六角穴付き止めねじには有りません。
JIS規格で全長は 2.0mmが一番短い全長です。これは、すりわり付き止めねじも六角穴付き止めねじも同じです。
DEL(デル)規格では、M1×1.0 (太さ1mm、全長も1.0mm)から規格化していますが、 1.0mm未満の全長も受注生産品として、ねじピッチとネジ先の形状により製作可能です。
また弊社では、すりわり付き止めねじの、くぼみ先や棒先は受注生産ですが、 M1.6 より細い呼び径も、2.0mmより短い全長も、製作可能です。
■すりわり付き止めねじ
以下は、弊社DEL(デル)規格のデルスクリューについて述べます。
すりわり付き止めねじ | 六角穴付き止めねじ |
---|---|
![]() |
|
ネジに、フライスによる 「マイナスの溝」 が加工されている。 |
ネジに、鍛造による 「六角の穴」 が加工されている。 |
マイナス・ドライバーで回す時、 ドライバーの中心とネジの中心を 合わせにくい。 |
六角レンチで回す時、 レンチの中心とネジの中心を 合わせやすい。 |
マイナス・ドライバーでネジを 取り上げ(くっつき)にくい。 |
六角レンチでネジを 取り上げ(くっつき)やすい。 |
ネジの外周に「マイナスの溝」 フライス・ベロバリの発生がある。 ベロバリ発生を無くす方法はこちら |
ネジの内側に「六角の穴」 バリの発生がない。 |
この様に、六角穴付き止めねじの方が、ねじを回すための構造上の違いから断然有利です。
ただ、六角穴付き止めねじのJIS規格にはM1.6 より細い止めねじはありませんし、 径よりも全長が短い止めねじですと製作が困難になり、 コストは、すりわり付き止めねじと比較して、相当高くなります。
止めねじの色々な呼び方・愛称・俗称の詳細については、 イモネジの、いろいろな呼び方 に詳しく書きましたので、よろしければご覧ください。
■すりわり付き
■六角穴付き
真鍮(しんちゅう)製のイモネジが一般的に使われるのは、 強い力は必要でなく、磁性を嫌う所や、導電性を求める所に使われる事が多いです。 また、真鍮はメッキをしなくても比較的錆びに強いので、水周りにも良く使われます。
真鍮は、黄銅(おうどう)とか、BS(びーえす)とか言われますが、要するに銅と亜鉛の合金です。 BS は英語の Brass からの略語です。黄銅については ウィキペディア(Wikipedia)黄銅 に詳しく載っていますので、宜しければご参照ください。
右の写真は快削黄銅(C3604)製の調整ねじで、ねじの太さは M2、ピッチは細目の 0.25mmで、全長は 4.0mmです。
写真をクリックすると、大きな写真と詳細図も表示されます。
調整ねじなので先端は丸形状で、細目ピッチ( 0.25mm)ですので微細な位置調整が可能です。 ちなみに M2の並目ピッチは 0.4mmです。 細目ピッチ( 0.25mm)は、材質に関わらず需要が少ない為に受注生産となります。 並目と細目の読み方やピッチ比較、はこちらをクリックして下さい。
磁性を嫌う点ではアルミ製も考えられますが、アルミ材は真鍮材に比べると外径の細い材料(φ2、φ3)が入手し難く、
また、加工も真鍮よりも難しい事から、コストは真鍮製よりも大分高くなります。右図はアルミのイモネジです。
写真をクリックすると、大きな写真と詳細図も表示されます。
非鉄金属としては、「快削 黄銅」、「快削 アルミ」の他に、 「快削 リン青銅」、「快削 洋白」、なども製作可能ですが、 どの材質も需要が少ない為に受注生産となります。 材料名をクリックすると、各材料の成分等の詳細が表示されます。
弊社では1967(昭和42)年頃から1991(平成3)年頃迄の20年以上に渡り、株式会社 松坂電機製作所向けに マイクロモーター用ガバナの調速ネジを多数作っていました。これは主にラジカセに使われていたようです。
その調速ネジは真鍮製で、M1.7×0.2や M2×0.25の細目の棒先形状のイモネジでしたが、 電気をON/OFFする為、棒先の先端平部に貴金属の小さな電気接点をロウ付けしていました。
ガバナとは、DCマイクロモーターの回転速度を一定に保つ為に、遠心力を利用して電気を高速でON/OFFする機械式の装置ですが、 機械式は故障も多く、コストも高かったのでしょう、電子式の電子ガバナに代わって行きました。
ネジを「切削ダイス」で作る時について述べます。
弊社でも、昔(1988年頃まで)は「切削ダイス」を使っていました。「切削ダイス」の事を普通は「切削」を省いて、我々は単に「ダイス」と言います。 以下で「ダイス」とは、「切削ダイス」の事を表します。
ネジの呼び径(太さ)により、M1、M1.2、M1.4、M1.6、M2 等のダイスを使い分けます。 同じ呼び径でもピッチが違えば、ダイスも異なります。例えば、M2×P0.4(並目ピッチ0.4mm)とM2×P0.25(細目ピッチ0.25mm)のように使い分けます。 (M がねじの呼び径、P がねじのピッチです)
ダイスはダイス鋼と言う特別な材料で作り、焼入れ焼戻しを行い、鉄やステンレスよりも硬くします。 ダイスはダイスメーカー(例えばヤマワ等)が製作しています。(超硬ダイスも有りますが、非常に高価です)
だいぶ以前(1985年頃)にオーエスジー株式会社(OSG)の技術者が 『切削ダイスを作るのは手間が掛かる割に価格が安くて、もう切削ダイスは作りたくない。これからは、転造ダイスの時代です。』 と言っていたのですが、現在、オーエスジー株式会社(OSG)は自動旋盤用のダイスは製造していません。
昔(1970年~1985年頃)弊社でダイスを使って、M1.7×P0.2(細目)とM2×P0.25(細目)の真鍮のネジを作っていた時、 三角形のネジ山の、上から三分の一位が丸く削られたネジ不良が頻発しました。 この原因は、ダイスの谷に材料の真鍮が溶着して、溶着した真鍮により三角形のネジ山の上が削られるのが原因でした。 ダイスの谷部に溶着した真鍮は、尖った針の先でつついても容易には取れなかったです。 その時は、真鍮材の銅の配合比率の多い材料を使い、またダイスの後ろから切削油を強く吹き出し、 何とか凌ぎましたが、それでも100%の品質維持は難しかったものです。
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↑ これは昔使っていた、 M1.4×P0.3用の 切削ダイスです。 |
さらに昔(1967年~1976年頃)に弊社でダイスを使って、マルマンのガスライターに使われるM1.4の快削鋼のネジを作っていた時、 5万個位作るとネジ山の上が欠ける不良品が頻発しました。 原因はダイスの切れ刃が、へたって(摩耗して)きたからです。 ステンレスのネジをダイスで作ると、もっと悲惨です。1万個も作らないうちに、ダイスの切れ刃が、へたって(摩耗して)来ます。
またダイスでネジを作る場合はダイスの食い付き(切り始め)の為に、ネジの最初の2山位までは、ねじ山の形状が崩れる場合が多いのです。
ねじ山の品質管理上、ダイス交換のタイミングには大変気を使います。
右上の写真のダイスはソリッド・ダイスと言って、出来上がるネジの外径寸法は決まるのですが、 更に昔のダイスは一部が割れていて、そこにクサビを打ち込んでネジの外径寸法を調整しました。
ダイスを製作・販売する側は『ダイスは安い』と言いますが、使う側ではダイス代もさる事ながら維持の手間も含めて、『とても高いもの』になってしまうのです。
そのような訳で、一般的なネジを量産するのには、切削ではなく転造が有利なのです。ただ、転造の場合は「すりわり付き止めねじ」を作るのは苦手です。 転造の特徴であるコスト競争力も発揮されません。 特に外径と同じ位の短い全長のイモネジは、ネジ部の転造加工が非常に難しいです。