ダイスによる、ネジ加工

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これは昔使っていた、
M1.4×P0.3用の
切削ダイスです。

小径の切削ダイスを作るのは、”ダイス鋼材”のダイス・ブランクに「種タップ」と言う精密なタップでメネジ加工します。 その後、焼入れ・焼戻し熱処理をして、研削加工で喰い付き刃を付け、両面を研磨して完成です。

このダイス制作方法では、ダイスのメネジ部分には「逃げ角」に相当する加工は施されていません。 つまり、逃げ角の無いダイスで雄ねじを加工する時、ダイスのメネジ部分が被削材の雄ねじ部分に全体的に接触します。

この事が、小径の切削ダイスで雄ねじを切削加工するときに『ネジ部ムシレ』を生じさせる元凶となります。

”ダイス鋼材”で出来たダイスでは、被削材がステンレス等の硬い材質ですと磨耗が早く、磨耗が生じると『ネジ部ムシレ』がさらに出来やすくなります。

また、ネジ加工の基本としては、材料が1回転する間にネジの加工工具をネジ1ピッチ分だけ横(長手)方向に送る事が基本となります。

ダイスでのネジ切り加工は、カム式自動旋盤で自動加工する場合も、人が手加工する場合も同じですが、 最初にダイスを材料に1山ほど喰い付かせれば、後はダイスに回転を与えるだけでネジ切り加工が行われます。

これがダイス加工の特徴ですが、一番難しいのはダイスを1山ほど喰い付かせる時です。 「喰い付かせる時」は、ダイスが1回転する間にネジ1ピッチ分だけダイスが進むように力を加減します。 キチンと喰い付いたなら、後はダイスを回転させるだけで、ダイスは自らネジを加工していきます。 そして、所定の長さを加工したら、ダイスを逆回転させてダイスを戻して、抜きます。

この「キチンと喰い付いたなら」ですが、場合によってはキチンを喰い付かない事があります。 これが『ネジ未加工品(ネジなし)』を生じさせる原因となります。 『ネジ未加工品(ネジなし)』には、ネジが全然加工されていない場合と、途中まで加工されている場合とがありますが、原因はそれぞれ違います。

キチンと喰い付かない原因や、ネジが途中までしか加工されていない原因は、色々と考えられますが、下記などが考えられます。

カム式自動旋盤でのダイスやタップによる ねじ切り加工では、主軸(材料)側の回転と、ダイス(工具)側の回転との差速(さそく)で加工します。 「差速」の説明は難しいのですが、要は人が手加工する時と同じ事を、機械が行っているだけです。

    日本語でダイスは、英語ではdieで下記の意味があります。
  1. 死ぬ。
  2. 《機械》雄ねじ切り機◆金属棒の外側に、ダイス回しを使ってネジを切るもの。

 

チェーシングによる、ねじ加工

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これがチェーシング
加工をする基本的な
バイトの形状です。

弊社での ねじ加工方法は、「マイコン制御のカム式自動旋盤」(上記動画)によるバイトでのチェーシング加工です。

チェーシング加工とは、60°の刃先を持つバイト(右上の写真)による、切削ねじ加工を言います。 チェーシング加工の特徴としては、切削ダイス(右下の写真)でのネジ加工に比べて、ネジ形状の仕上がり品質や、 ネジ外径・ネジ有効径の精度等に、抜群の安定した高精度でのネジ製作が可能なこと等が挙げられます。

チェーシング加工は 雄ねじ(オネジ)だけではなく、普通はタップ加工で作る 雌ねじ(メネジ)もチェーシング加工が可能です。

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これは昔使っていた
M1.4×P0.3用の
切削ダイスです。
    次にその詳しい特徴をお話しします。  
  1. チェーシング加工の一つ目の特徴

    IS規格にないピッチやリードも簡単に製作が可能ですし、 JIS規格にないネジ山角度(50度、55度、90度、等)も自由に製作可能です。  

    弊社のマイコン制御のカム式自動旋盤ではチェーシング加工でネジ加工しますので、カム式自動盤での真鍮製リードスクリューの加工・製作も可能なのです。 また、一条ねじ( 1条ネジ)のリードスクリューだけでは無く、二条ねじ( 2条ネジ)のリードスクリュー、三条ねじ( 3条ネジ)のリードスクリュー等の多条ネジも加工・製作が可能です。

    • ピッチとは、隣り合った山と山との距離です。
    • リードとは、ネジを 1回転した時に進む距離です。
       1条ネジの場合は、ピッチ=リード です。
       2条ネジの場合は、ピッチ×2=リード です。
       3条ネジの場合は、ピッチ×3=リード です。

  2. チェーシング加工の二つ目の特徴

    ねじの「外径」「有効径」「谷径」で、JIS規格外の自由な寸法のねじ製作が可能です。 また、ねじ呼び径の M0.8(S0.8)や M0.6(S0.6)も製造実績があります。 ちなみに、ミニチュアねじJIS B0201の、S0.8のピッチは 0.2mmで、S0.6のピッチは 0.15mmです。  

    また、この規格で一番細い呼び径 S0.3のピッチは 0.08mmですが、これもテストとして真鍮材で平小ネジを製造した事があります。


  3. チェーシング加工の三つ目の特徴

    不完全ネジ部を 1山以内に出来ることです。ネジの奥に逃げ溝を作る場合でも、溝幅は 1山で十分です。 ダイスでのネジ加工では、ダイスの切れ刃は通常 1.5山~ 2山ですので、不完全ネジ部を 1山以内にするのは難しいのです。


  4. チェーシング加工の四つ目の特徴

    ネジ切りバイトの材質に超硬合金を使いますので、切削ダイスに比べて工具の磨耗が少ないことです。 磨耗が少ないと、ねじ外径や、ねじ有効径の寸法変化も少ないので高精度なネジ加工が出来ますし、 ネジ加工工具の交換の手間も減りますので、低コストに結び付きます。


以上四つの特徴が有るのですが、弊社の「マイコン制御のカム式自動旋盤」は、 小さくて剛性のない自動盤ですので、一般のネジやリードスクリュー等の材質は非鉄金属が得意で、その中でも真鍮が最も得意な材質です。 しかし単純な小さいネジ( M3以下)ならば、快削鋼(SUM24L)や快削ステンレス(SUS303相当)でも製造可能です。

 

ねじの同軸度・直角度

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切削加工と塑性加工の所でも述べたように、それぞれに特徴が有りますが、ねじの同軸度と直角度に着目すると、

ただし、切削加工においても、雄ネジをダイス加工したのでは、ネジの同軸度・直角度は、余り高くは出来ません。

マイコン制御の自動旋盤 NC旋盤などで行われている、切削によるネジ加工方法の一つであるチェーシング加工(バイトによるネジ切り加工)では、 ネジ部と、他の軸や穴との同軸度や、端面との直角度を、安定的に精度良く加工できます。

右の写真は、弊社のマイコン制御のカム式自動旋盤(上)と その操作盤(下)です。(写真をクリックすると、大きく表示されます)

マイコン機の操作盤 弊社のマイコン制御のカム式自動旋盤は、カム式自動旋盤ですがチェーシング加工(バイトによるネジ切り加工)でネジ切りを行っていますので、 ネジ部と、他の軸や穴との同軸度や、端面との直角度を、安定的に精度良く加工できます。

塑性加工の一つである転造でのネジ加工では、ネジ部と、他の軸や穴との同軸度や、端面との直角度を、安定的に精度良く加工する事は難しいと思います。

 

特殊な角度ねじ山の加工

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ネジ加工バイトの成形・研磨は自社で行っておりますので、ねじ山角度が 60度だけではなく、55度ねじ山や、90度ねじ山等も簡単に製作可能です。

ただし、ドライバー(ねじ回し)で回す所の形状は、自動盤による切削加工ですので、フライスカッターによるマイナス溝(すりわり)のみです。 プラス溝(+)や、六角穴は、塑性加工(ヘッダー加工)で作りますので、弊社での切削加工では加工できません。

「精密機器用すりわり付き小ねじ」や、お客様で独自に設計された小さいネジ部品などの受注生産も承っております。

弊社でも1987年(昭和62年)頃までは、カム式自動旋盤でのダイスによる切削ネジ加工を行っておりました。 その頃の品質維持に対する苦労を思うと、今は隔世の感があります。 ダイスの切削刃部にキチンと切削油を掛けないと、ダイスが直ぐに磨耗したり、ネジの外径部がダイスに溶着して、ネジ外径が細くなったりしました。

また、高速回転をするダイスが切削油の油煙を巻き上げて、工場の中が霞んで見えました。 あんな大変な思いをしたダイスによるネジ加工に戻れと言われたら、廃業した方がマシですね。

バイトによるチェーシング加工は、弊社以外の自動盤屋さんでは、NC自動盤では加工出来ますが、カム式自動盤では加工出来ません。 切削ダイスによるネジ加工をしているカム式自動盤屋さんでは、現在、そして将来に難しいものを抱えていると思います。

 

切削でリードスクリューを加工

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リードスクリュー(一条ねじ)リード0.85 (材質:真鍮)
lead-screw lead-screw

上の写真のリードスクリューは、バイトによる切削加工(チェーシング加工)で製作したものです。 この写真では少し分かり難いかも知れませんが、ねじ谷の部分をバイトで切削加工していますので、谷の部分は平らになっていますし、山の上も平らになっています。

この切削加工(チェーシング加工)では、ねじ部の長さが 1山のネジでも加工が可能です。 ただし、ねじ部の長さが 1山のネジは、イモネジではなく頭のあるネジ(平小ネジ:平ビス、皿小ネジ:皿ビス)でないと、すりわり加工が出来ません。

イモネジではネジの外径部分が、すりわり加工をする上で最少 2山は必要です。